気密性の高い建物は省エネである一方、自分の出した空気を溜め込みます。全熱交換換気はこの対立を解消します。新鮮な空気を流し続けながら、支払ったエネルギーの大半を建物内に留めるのです。本ガイドでは、HRVとERVの違い、それぞれが適する気候、内部のファンの役割を解説します。
熱交換換気の仕組み
HRV(熱交換換気)もERV(全熱交換換気)も、中身は同じ三つの要素です。熱交換素子、ファン、そして制御部。水回りからの排気と屋外からの給気を混ざらないように並べて素子に通し、熱——夏は冷気——を一方の気流から他方へ移します。排気が給気を事前に調整するため、換気は回り続けながらエネルギーは大部分が建物内に残ります。室内空気質が向上し、同時に消費エネルギーも大幅に下がります。
HRV:顕熱を回収する
HRVの素子が伝えるのは熱だけです。冬は暖かい排気が冷たい給気に温度を渡し、夏は逆に給気を予冷します。伝えないのは湿気です。排気側の水蒸気は、そのまま建物の外へ出ていきます。
ERV:熱と湿気を回収する
ERVはさらに一歩進みます。素子が熱とともに水蒸気の一部も伝えるため、湿気が外に捨てられるのではなく気流間を移動します。冬は乾いた外気に室内の湿気が奪われにくく、夏や蒸し暑い日は外気の湿り気が乾いた排気へ受け渡されます。結果として、熱回収に加えて室内湿度がより安定します。
どちらがどの気候に合うか
実務上の使い分けはシンプルです。
- HRVは寒くて暖房期間の長い気候に向きます。熱を閉じ込めることが優先で、外気が乾燥しているからです。
- ERVは暖かく湿潤で冷房期間の長い気候に適します。冷えた空気を守ると同時に、外の湿気を持ち込まないことが同じくらい価値になります。
どちらが常に優れているわけではなく、気候が決め手です。両極端の中間にある建物は、主となる季節で選びます。
機内のファン:EC両吸込み羽根
注目を集めるのは熱交換素子ですが、静かさ・安定性・運転コストを決めるのはファンです。現代の機種はほぼ例外なくEC両吸込み遠心ファンを採用しています。
- 低速での連続運転。 換気は24時間回り、ファンは最大能力を大きく下回る領域で働きます。消費電力は回転数のほぼ3乗で減るため、低速運転は不釣り合いなほど安上がりです。これが換気機の経済性の核です。
- 低騒音。 左右均衡の両吸込み羽根とブラシレスECモータが、寝室に耐える音レベルを保ちます。
- 安定した風量。 内蔵電子回路による回転数制御(最新世代はFOCベクトル制御)が、フィルタの目詰まりや風圧に対しても風量を維持します。
- 需要対応と連携。 回転数インターフェースは機器の制御部につながり、さらにビル管理システムへ延びます。湿度・CO₂・スケジュールに換気を追従させられます。
弊社の新型EC両吸込み遠心ファン(FOCベクトル制御のSF146A-E092A3-02など)は、まさにこの役割のために開発されました。コンパクトな設置面積で、静かで安定した風量を供給します。
HRV・ERVの設置場所
同じ構成が幅広い建物に応えます。住宅・集合住宅、ホテルや別荘、アパート、オフィスビル。人が長時間過ごし、建物がある程度気密であれば、熱回収付き機械換気はまず快適さで、次いでエネルギーで元を取ります。
HRVかERVかの選び方
次の順で判断します。
- 気候を見る。 寒く長い暖房期はHRV、湿った長い冷房期はERVへ。
- 湿気の問題を確認する。 冬の乾燥で木が割れるならERV、蒸し暑い夏が続くならなおさらERVです。
- 低速連続運転を前提に選定する。 ブーストではなく日常の在室に合わせて風量を決めます。ファンは効率のよい特性曲線下側1/3で生涯を過ごすべきです。
- 熱交換素子だけでなくファンの仕様を見る。 音レベル、回転数制御、ECモータ効率が日々の満足度を決めます。
こうした機器を支えるファン選定の一般的な考え方は、遠心ファン選定ガイドを参照してください。
まとめ
HRVは熱を、ERVは熱と湿気を動かします。選ぶのは立地の気候です。素子がどちらであれ、中のファンは今やEC両吸込み遠心式です。寝室でも許容できる静けさ、風やフィルタに負けない安定性、そして低速運転ゆえの低ランニングコスト。機器の風量と目標圧力をお知らせください。両吸込み遠心シリーズから最適なファンをご提案します。